2010.11.20

「マイナス金利」は実現不可能なアイデアである

 「マイナス金利」とは、「預金」の残高に対して一定率を課税することです。もし預金をそのままにすると、定期的に税金を取られることになります。それがいやな人は、銀行から引き出しますが、そうすると多くの人はついお金を使ってしまうので、その分景気が良くなるだろうというアイデアです。

「マイナス金利」政策はいかが?(アゴラ 磯崎 哲也)

 本当にそんなにうまくいくのでしょうか。

 それを考えるため、1億円を銀行に預けている場合を想像してみます。税率を0.5%とすると、年間で50万円を取られることになります。果たしてどれくらいの人が何もしないでいるでしょうか。おそらく、かなり多くの人が、50万円を節約するために、いっせいに銀行から預金を引き出すでしょう。これは取り付け騒ぎと同じです。

 課税対象日を限定すれば、その前日には行列を作って預金を引き出し、次の日にはまた行列を作って入金することになるでしょう。お年寄りがパソコンを使って、証券会社の預かり金に移動するのがあたりまえになるかもしれません。

 課税対象を日割りにすれば、預金は銀行から出ていくことになります。預金を集めるために、税金分を補てんする銀行もでてくるでしょう。そうなれば銀行の経営が成り立たなくなります。これだけでも、マイナス金利は実現不可能であるといえます。


 日銀の白川総裁は、マイナス金利に対してこう言っています。

『日本銀行の白川方明総裁は9日午前、参院財政金融委員会の閉会中審査で、現在0.1%の日銀の政策金利をマイナスにするのは「理論的なアイディアとしては確かに面白いが、実務的に難しいというのが関係者のほぼ一致した見解だ」と述べ、マイナス金利の実現には否定的な見方を示した。』

日銀総裁:マイナス金利は理論的に面白いが実務的に難しい(ブルームバーグ)

 つまり、誰がどうみても実現不可能だということです。銀行券という手段がある以上、マイナスにしたら当然銀行券で保有します。紙で保有できるなら銀行券で、それ以外の電子的な手段があれば、その方法で保有するだけです。


 ただ、磯崎氏が言うように、銀行の国債保有リスクを個人に移転させることができるという国にとっての利点があります。その他にも、
 ・銀行の国債運用益がなくなり、本来の業務に専念せざるをえなくなる。
 ・国債を個人が保有し、金利が上がる。
と、本来あるべき姿に戻すことができます。

 しかし、マイナス金利が銀行から預金をなくすことである以上、銀行・金融庁の反対が強いでしょうし、国債消化が不安定になることで、財務省も反対するでしょうから、決して実現することはないでしょう。

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2010.02.22

「リフレ政策」は「景気対策」を言い換えただけに過ぎない

 国債残高がGDPの200パーセントに近づき、だれが考えてもこれ以上は増やせない段階になってきました。海外からも心配され、国債暴落で大儲けをたくらむヘッジファンドもやってきています。

 こんな状況になってもまだ赤字国債に頼りたい人たちが、なんとか国債を増発する大義名分を作ろうと、言葉を発明しました。それが「リフレ政策」です。

 「リフレ政策」は、デフレを止め、インフレターゲットを設定するものです。1パーセント程度の物価上昇の目標を設定すること自体に異論はないし、多くの人が賛同しているのですが、問題はその手段です。

 すでにゼロ金利になっており、これ以上金利は下げられません。量的緩和は前例があり、心理的な効果はあっても、実質的な効果はないと分析されています。
 イエレン総裁の講演=日銀量的緩和は「効果ない」(本石町日記)

 では、リフレ派は具体的に何をしろと言っているのでしょうか。

 リフレ政策ポータルWikiからリンクされている、REITI高橋洋一氏のインフレ目標政策への批判に答えるというページにそれがあります。

『政府・中央銀行(広義の政府)が通貨を発行すれば、ほぼその残高に等しい通貨発行益が生じてそれが有効需要を創出するのでモノの価格が上がるわけだ。GDPギャップがどの程度あるかは、いろいろな計算方法があるが、仮に5-6%であるとすれば、ネットで30兆円ほどの通貨発行でよい。政府通貨を発行して財政支出をしてもいいし、中央銀行が市中国債を買入れ政府がそれと同額の国債を発行し財政支出・減税・社会保険料減額をしてもいい。』

 電子化されている現代では政府円と日銀円を区別できないので、この政策提案は実質的に政府が赤字国債を発行し、それを景気対策に使えというものです。30兆円も使えば景気はよくなるし、物価も上がるでしょう。しかしそんなやり方は一時的な効果しか生み出さないことがわかっているはずです。

 ゼロ金利もやった、量的緩和は効果ない、ということで、日銀にはもうできることがありません。政府による赤字国債発行・景気対策という旧来の政策もできません。

 そこで日銀の白川総裁が言っているのが、「生産性」の向上です。つまりもっと働いて稼げということです。稼げばそれなりに使うので経済が活性化します。

 あるいは、あまり価値を生み出せず、補助金をたくさんもらっている産業をリストラし、その労働力を稼いでいる産業に振り向け、補助金分を減らし、それを成長分野に投資することも生産性の向上につながります。

 しかしこのような議論はリフレ派には通じません。「工場でいくらでもモノを作れるから、すでに生産性が高い。それなのになぜインフレにならないのか」という、とんでもない誤解で日銀を嘘つき呼ばわりする人もいます。

 リフレ派の問題は、自分たちの主張が単なる景気対策なのに、真っ当な金融政策と思い込み、日銀を激しく批判していることです。

 しかも、自分たちは素人より本をたくさん読んでいる、クルーグマンもスティグリッツもバーナンキもリフレ派なんだぞ、株式・資産運用者の言うことはポジショントークで経済を語る資格はないなどと、反対派を見下し、聞く耳を持ちません。
 すべての人に贈るだまされないための経済入門ーベストブックガイド100+1(Economics Lovers Live)

 一番恐ろしいのが、お金に困っている民主党がリフレ派を利用することです。こういうトンデモ政策は財務省が相手にしないでしょうが、もし、小沢氏に力が残っているとしたら、財務省を無視し、選挙対策として強引に導入してしまうかもしれません。

 そのとき、国債のマーケットはどうなるのか、それでも動かないのか、よくわかりませんが、日本が悪い意味で世界から注目されてしまうのだけは間違いないでしょう。

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2010.01.03

日本国債は暴落するのか

 民主党のおかしな政策で国債の増発に歯止めがきかなくなり、やがてマーケットで売りがはじまり、長期金利が上昇、国債価格が暴落するのでは、という懸念があります。
 日本国債市場の暴落に賭ける投資家たち(jp.wsj.com)
 

『一部のヘッジファンドは、今後日本にとって厳しい状況が続くことに賭け始めている。~日本政府の借金は引き続き拡大するなかで、日本国債に対する需要が減少する可能性があると考えている。』

 11月の初めに、長期金利の上昇局面がありました。ところが1.5%にも達せずに買い戻しが入り、元の1.3%に戻ってしまいました。

 海外ヘッジファンドは日本国債に売りを仕掛け、もうけを狙ったようですが、日本の機関投資家は、ちょっと金利が上がると押し目食いを入れるという状況で、そう簡単には金利は上がりません。このあたりの解説が本石町日記にあります。

 マスコミが騒ぐと相場は終わる、の巻=債券、やっぱり買いたかったのね

 民主党と鳩山内閣のデタラメさは、海外にも認識されており、今後もおかしな政策を発表するたびに、大臣がおかしな発言をするたびに長期金利が急上昇する局面があるでしょう。しかしそれは一時的な売りに終わる可能性が高く、まだまだ金利は抑えられそうです。

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2010.01.02

国の借金はいくら増やしても大丈夫なわけがない

 最近、国の借金はいくら増やしても大丈夫と考えている人が少なからずいるようです。常識的には、何かの投資にともなう借金なら大丈夫ですが、ただ使ってしまうだけなら問題です。それは借主が政府であっても同じです。


「政府紙幣でもなんでもいくらでも刷って、一気に債務帳消すればいい」

 ->それができるなら国債発行の意味がありません。日銀も不要で、政府が好きなだけ口座に振り込めばいいのです。でもそれでいいのでしょうか。そうやって得たお金に価値はあるのでしょうか。

「日銀が国債をいくらでも引き受ければいい。」

 ->円が信認を失っていいのでしょうか。これも極論でしょう。
 日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?(日銀HP)

「もっと借金を増やせば日本の財政の信認が落ち、円安になり景気が回復する。」

 ->国債の信用が落ちて円安になるとは限りません。金利が上がるから円高になるかもしれません。

「まだ金利が低いのはもっと借金できる証拠。」

 ->それはその通りですが、借金できるからしていいというものではありません。返せそうにもない借金はすべきではありません。

「家計資産、法人資産を加えた日本全体では十分黒字。」

 ->それはその通りですが、国の借金と個人、法人の資産は別会計です。税金など、なんらかの方法によって資金を移動させなければなりません。新しい税金には法律の新設が必要で、ハードルが高いです。

「国の借金は自民党が作った。」

 ->だからといって民主党はもっと増やしていいはずがありません。

「小泉内閣時代に国債発行残高が急増した。」

 ->これは隠れ国債を表に出したからです。あれだけ公共事業を減らし、景気がよくて国債が急増したはずがありません。

「資本主義は限界。個人資産に上限を設けるべき」

 ->北朝鮮のような国にしたいのでしょうか。いまちょうど北朝鮮でこれをやっています。どんなことになっているか見たほうがいいでしょう。


 実際に長期金利が3パーセントくらいになって、どんなに大変なことがおこるか見てみないとわからないのかもしれません。そのときは株価全体が下がり、国債をたくさん保有している銀行の株価はもっと下がるでしょう。660兆の3パーセントは20兆円です。22年度の元利支払いが20兆円です。増税をするのか、短期国債でつなぐのか、やりくりが大変になるでしょう。

 自分の国の通貨の信用をなくさせ、円安にさせ、インフレを起こして借金をチャラにしようという考えはどうみても正しいとは思えません。なぜそこまでして国をあてにしようとするのでしょうか。

 現状維持のために借金に頼っていては、将来の落ち込みが大きくなります。高齢化と少子化で日本経済が縮小するのは明らかなのですから、落ち込みをできるだけ小さくする戦略が必要です。国債発行残高を適正規模まで縮小させ、将来に渡って金利を絶対に上げさせない努力が必要です。そのためには今のうちにある程度落ち込ませるほうがいいかもしれません。

 借金したら返す、必要でも過大な借金はしない、というあたりまえの常識が日本社会から失われているようで、非常に残念なことです。

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2009.10.15

やがてくるのは大増税か財政破綻か

 はてなで将来の日本を予想するエントリが人気です。大増税が不可避という、
『やがてくる大増税時代に豊かに生活するために準備すべきこと』(分裂勘違い君劇場)
と、
『日本国政府がどれだけ借金しても絶対に日本は倒産しないと言うことのサルでも分かる説明』(金融日記)
は、なかなか読みごたえがあります。

 経済的に苦しくなるにつれ、国民は政府を当てにしてばかりいます。

 本来、リーダーは自助努力や自立を説くものです。ところが、政治家も、マスコミも、評論家も、大学教授も、ほとんどが政府が悪い、なんとかしろという論調ばかりです。

 政府がなんとかするためには、本格的な財源が必要です。もっと前から消費税を含む税金を上げておけばよかったのに、選挙が怖くて上げられなかった結果、将来の上げ幅が大きくなりそうです。

 大増税になったら、
 1)外食や、調理済み品の購入をしない。自炊すれば生産者と消費者が
   同じになり、貨幣のやり取りがなくなり、税金はかからない。
 2)お店でモノを買わず、直接個人間で中古品を売買する。その際に、
   ヤフオクなどを使わない。
 3)中所得者は所得税が上がったら、働く量を減らして低所得者になる。
 4)自分で法人を設立し、仕事場と自宅を一体化してしまう。

といった対策が個人として必要になります。そして、今のうちに、

 1)生産消費スキルの獲得に時間とエネルギーを使う。
 2)所得税の低い今のうちにできるだけ貯金する。
 3)インフレ対策として、現金以外や外貨への投資を準備する。

といったことをしておく必要があります。「働いたら負け」が現実のものになりそうです。

 増税だけでは社会が回らないので、赤字国債との組み合わせになるでしょう。どんなに国債を発行しても、それを買っている日本人がいる限り、絶対に日本は倒産しません。でたらめな借金を無理して返し、それで不況にすべきでないという考えは正しいと思います。

 「努力しても成功しない」といって努力しないことを正当化する人が増えるにつれ、状況は加速度的に悪くなっていくような気がします。思ったより短期間に悲観論が台頭し、消費が落ち込み、長期金利が上がるということになるかもしれません。

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2006.09.03

CPIショックで年内利上げは見送りか

 日本にいない間に長期金利がずいぶん下がってしまいました。1.8%が底だと思っていたのですが、金曜日は1.600%まで低下し、来週は1.6%割れもあるかもしれません。
 債券15時・先物、3日ぶり反落――現物債も軟調(NIKKEI NET)

 この原因のひとつが、25日に発表された7月の消費者物価指数です。前年同月比0.2%上昇ながら、ガソリンなどを除いた欧米型指数では0.3%の下落となったというものです。今回から基準が改定されたため、状況は同じでも数字だけ6月の0.6から0.2になり、見かけ上0.4下がったように見えます。

 本石町日記によると、これは“CPIショック”と呼ばれており、債券市場に衝撃が走り、長期金利が急低下したのだそうです。

 日銀の見解はどうかと言うと、このCPI改定が4月展望リポートのシナリオ変更を迫る内容とはとらえておらず、市場の反応が行き過ぎているとみています。
 日銀は年内利上げ排除せず、米景気や市場のシグナル分析(asahi.com ロイター)

 しかし実際にCPIの数値が低くなれば利上げの理由がなくなり、政府などからの圧力もあって、金利は現状維持が続きそうです。

 さらに、31日の鉱工業生産統計が予想外のマイナスとなってだめ押しになり、年内利上げの可能性は相当低くなりました。よほどの株高などがなければ、利上げはないものと思われます。

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2006.07.29

住宅ローンは変動が有利

 28日のテレビ東京WBSの中で、住宅ローンを長期固定と変動のどちらにすべきかという特集をやっていました。

 3日前に、長期固定の住宅ローンを選択する人が多くなってきたという日経新聞の記事を、番組の中で否定するかのように伝えたため、あらためて特集にしたようです。

 コメンテーターのUFJ総研五十嵐氏は、金利の推移予想図を使い、変動金利が固定金利を下回っている面積が、上回っている面積より多いなら、変動が有利であると解説していました。

 肝心なことは、この先どちらの面積が多いと予想できるかです。五十嵐氏は自分のローンを変動にしているそうです。ついでに大浜アナも変動だそうです。

 五十嵐氏はよく、長期金利が低いままであるのに、短期金利がそれを超え続けることはありえないと力説しています。現在のところ、10年債の金利は1.9%程度です。30年債でさえ2.5%程度です。

 五十嵐氏はアメリカの金利についても同じことを言っています。アメリカの長期金利は5%から上がらないのだから、短期の金利も一時的に5%を超えたとしても長続きせず、いずれは下がってくるという予想です。

 そう考えると、日本の短期金利はここ10年は2%が上限なんだろうと思います。そして、優遇付き変動住宅ローンの金利も3%が上限だと思います。つまり、常に変動金利が有利であるという結論になります。

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2006.04.29

日銀が2006、7年の物価上昇を0.6、0.8%と予想

 日銀から「展望リポート」が出ました。
 経済・物価情勢の展望(2006年4月)

 この中から物価の見通しを抜き出すと、
・消費者物価は、2006年度は0.6%、2007年度は0.8%と予想される。
・需要超過の状態になってきている。
・中長期的にみると、物価が大きく上昇するリスクを意識する必要がある。

といったところでしょうか。そして今後の金融政策の運営方針については、

『現時点では、無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断している。そうしたプロセスを経ながら、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えられる。』

です。つまり、0.6%、0.8%程度の物価上昇であれば、ゼロ金利をしばらく続けたあとで、状況を見ながら、少しずつ利上げを行うことになりそうです。

 しかしある程度金利を上げると、国債価格の下落や財政負担が問題になってきますし、そんなにうまく物価が上がるかも疑問です。まずは今年いっぱい0.6%が続くか見極める必要があるでしょう。

 27日の朝日新聞にあった、「06年度内の早期解除を示唆」というのはどのあたりに書いてあるのか、読み取れませんでした。誤報だったようです。

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2006.04.17

長期金利は市場が決め、短期金利は日銀が決める

 量的緩和解除後、長期金利が上がり続けています。今後も上昇が続き、2%を大きく上回るかもしれません。
 14日のWBSでエコノミストの中島厚志氏が、「長期金利の上昇は、短期金利の利上げを織り込んだ動きである」と言っていましたが、私はその見方は間違っていると思います。

 長期金利はなぜ上がるのか?その説明が日銀のサイトにあります。
 長期金利の決まり方……将来の「予想」が大事

 これによると、長期金利は、長期資金の需要・供給の市場メカニズムの中で決まるとしており、その際、以下の「予想」が大切な役割を演ずるとしています。

1.期待インフレ率
 将来の物価変動はこの程度だろうという「予想」。

2.期待潜在成長率
 今後の経済が成長していく地力が強いと予想されれば、資金を投じて投資を行うことのメリットが高まるので、長期の資金需要も増え、長期金利は上昇する。

3.リスクプレミアム
 将来について不確実性があることに対して投資家が要求する上乗せ金利。

4.将来の短期金利の予想

5.借入主体の信用リスクプレミアム

 これら以外に、海外の金利にも影響を受けるようです。

 一方、短期金利は日銀が決められます。

『長期金利は、短期金利とは決まり方が大変違う、ということにご注目下さい。短期金利の代表は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)」ですが、これは日本銀行の金融調節によってコントロールされています。また、オーバーナイト物より少し長い短期金利(1週間や1か月の金利)もオーバーナイト物に強く影響されています。つまり、短期金利は、基本的にその時点の金融政策の影響下にあるのです。』

 日銀は一貫して、物価が上がらないならゼロ金利を継続すると言っており、11日の日銀決定会合でもそれは変わっていません。これからもインフレはあまり期待できないとすれば、ゼロ金利は続きます。

 とすると、長期金利上昇の原因として、1.と4.は違うでしょう。2.も5.も違うでしょう。残りはリスクプレミアムと海外金利です。原因としては、かなりわかりにくいものです。

 おそらく、日銀の量的緩和解除が内外の市場参加者に間違ったメッセージを伝えてしまい、これから金利をどんどん上げていくと誤解されてしまったのだと思います。それが将来の短期金利予想を高くし、海外の金利も高くしているのです。

 谷垣財相が言う「市場が必ずしも日銀のメッセージを受け止めていない。」というのは、このことを示しているのだと思います。

 この誤解が解けるまで、しばらく長期金利は2%を超えた水準でとどまっているかもしれません。アメリカでは長短金利差がほとんどなく、日本では差が2%を超えるといった状況になります。これで世界経済がバランスがとれるのだから不思議です。

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2006.04.10

量的緩和解除で世界の金利が上昇し破綻する?

 日経BPのSAFETY JAPANで、経営コンサルタントの吉田繁治氏が、量的緩和解除後の金融情勢を解説しています。
 金融の潮流が変わった!量的規制緩和解除は何をもたらすか(2)~金利上昇は避けられないのか~

 かなり長文ですが、だいたいこんな内容です。

・世界の金融資産は1京3800兆円ある。
・GDPの伸びに比べて、金融資産の伸びが高すぎる。
・資産の裏には負債がある。
・2%の金利上昇で利払いが276兆円も増える。
・現在の負債は低金利を前提にしている。
・量的緩和解除は、重要な意味をもつ政策転換である。
・世界の金利が同時に上がっている。
・長期金利は5%~7%が普通である。
・たった3%の金利上昇で、世界の金融の破綻が起こる。
・破綻とは、金利を払えない人が増え、貸した金融機関が破綻すること。
・今のうちに短期負債を、まだ十分低い長期の固定金利に変え、リスクヘッジすべき。

『92年に日本の地価が下がり始めたとき、「まだまだ上がる」と考えた人たちが過半数でした。目の前で起こっている現象を解釈できなかったからです。94年ころになってやっと「この地価の下落は、今までと違う。何か大変なことが起こっている」と皆が思い始めます。』
『膨らみすぎた負債で、金利が上がればどうなるか。言うまでもありますまい。金融資産そのものは、単に数字です。金融資産の価値をきめるのは、借り手の利払い能力だからです。わが国では、100兆円の不良債権処理で経験済みでしょう。』

 最近の金利上昇で、「やっぱり金利は上がる、それみたことか」と、破綻論を展開しています。それぞれの現象や数字の認識は正しいと思いますが、本当に金利が上がるのかどうかについては、過去のデータ・経験しか説明がありません。また、

『ファンドマネジャーは、「金利が上がる気配があれば、日銀がまた、ロンバート型貸し出し(国債担保による公定歩合(今0.1%)で貸すだろう」と安心しています。怖いのは意識の「茹で蛙」現象です。』

と、市場参加者の意識についても批判しています。さらに、

『低金利の10年は、いたるところに、金融リスクをバラまいてしまっているのです。例えばソフトバンクなど、今もっとも大きな負債リスクの会社になっています。私は、すでに、ジャンク債(ボロ債券)の水準と判断しています。世界における大規模な買収は、いずれも、買収に使う資金の低金利を前提にしたものです。株式交換も株高を背景にしたものです。』

と、世界中の会社に対して、低金利を利用して業績を上げようとする企業活動を批判しています。

 果たして、そこまで言い切れるほど確実に金利が高くなるのでしょうか。そして、万が一3%上がった場合に対応がとれないほど世界経済は弱いのでしょうか。

 私は上がらないと予想していますし、もし上がったとするならばそれなりの理由があるので、それにうまく対処できるように世界が動くことができると思います。

 金利が上がって困るのなら上がらないような政策を打つでしょう。それでも上昇が抑えられないのであれば、上がっても困らないような仕組みに世の中が変わっていくはずです。

 吉田氏は「認識は2年遅れる」と言っていますので、2年後にどちらが正しかったかがわかります。2年後に振り返って見たいと思います。

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