立花氏が「日本人の歴史認識の欠如」を強調
「立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」」は、今度は中国からのレポートです。思い入れの強い中国にいるためか、それとも、自民圧勝の予想によほどのショックを受けたのか、内容がかなり支離滅裂になっています。
対日戦争勝利記念式典に思う日本と中国、その原点と未来(nikkeibp)
『中国と米国のはざまで上手に生き抜くには』では、4年前に北京大学で行った講義の中で、中国は間もなく経済的に大発展して、世界有数の経済大国になると予言し、それが的中したと自慢しています。でも、ちょっと現状認識がおかしいような気がします。
・ゴリゴリの共産主義時代を経て大発展にいたる
->今でも資本主義のフリをした共産主義であり、「経て」というのはヘンです
・中国の経済力がさまざまな側面で日本を追い抜きつつある
->まだ抜いてないと思います。貿易額は抜いたようですが、内需はまだでしょう
・世界は経済においても、政治においても、いやでも米国と中国が世界の二大中心として動いていく時代を迎える
->中国に潜在力があるのは理解できますが、米国と並ぶかは疑問です
・嫌米派、嫌中派の日本人がふえつつある
->嫌中派、嫌韓派は増えているでしょうが、嫌米派は増えていないでしょう
『学術論文誌を埋め尽くす中国の爆発的エネルギー』ここでなぜかIEEEの医学・生物学部会年次総会の論文数の話題に変わります。
『提出されている論文は二千数百をかぞえるが、その大半が中国人によるものである。~欧米人、日本人、他のアジア人もいるにはいるが、全部合わせても中国人の十分の一程度だろう。』
そりゃあ中国で開催されれば発表がやりやすいから論文が集まるでしょう。これだけで「いま中国は、先端技術の分野でも、基礎科学の分野でも、世界のトップ集団の中にいる。」と結論づけられても全く説得力がありません。
『科学技術の分野の指導部が一斉に若返り』では、中国の先端科学技術の研究が世界のトップグループに追いつきつつあると絶賛しています。さらに
『私は、中国の国家レベルの科学技術政策の決定過程を現場で実地に調査してきた人を友人に持つが、しばらく前にこんなことをいっていた。「中国の学術論文は水準が低いなどといわれていたのは、かなり前のことで、いまはグローバル・スタンダードです。むしろ日本の若い研究者のほうがはるかに水準が低い分野が沢山ある。いずれにしても若手の研究者の人材の厚みが決定的にちがいますから、あと5、6年もすると、科学技術分野のほとんどあらゆる分野で日本は中国に追い抜かれます。一般の日本人はそういう実情をほとんど何も知りませんから、理由もなく、科学技術なら日本のほうが上だろうと思っている。科学技術分野で中国に抜かれたら、経済上の日本の優位性もすぐに消えます」』
と、たった一人の友人の予想を「中国の国家レベルの科学技術政策の決定過程を現場で実地に調査してきた人」というだけで鵜呑みにしています。本当にそうなのか裏づけは一切ありません。
『日本と中国のあるべき関係の原点とは何か』では、今度はテレビの話題に変わります。中国のテレビ局がこのところ連日、9月3日の対日戦争勝利60周年記念式典に向けて、さまざまな特別番組を放送していることを伝えています。
『報道番組あり、ドキュメンタリーあり、ドラマあり、演劇、バレエ、歌謡番組ありと、本当にあの手この手で、対日戦争時代の中国の苦難の日々が伝えられている。それが7月7日の盧溝橋事件記念日以来、2カ月もつづいているのだ。』
60年前の戦争でそんなに盛り上がるのがおかしいと思わないのでしょうか。
『中国の国家としてのアイデンティティは、日本と戦争をする中で確立していったというのが歴史の真実である。対日戦争抜きに中国という国家は存在しなかったといってもいい。対日戦争(と、それに対する勝利)は中国という国家の原点(誕生するきっかけ)なのである。』
この見方は驚きです。中国にとっては60年前の勝利がすべてであるようです。その前の数千年の歴史は何だったのでしょうか。
『日本人の歴史認識の欠如はいつまでもつづく』では、若者だけでなく、年配の人も歴史の知識が欠落していると批判しています。
『あの時代の日本は、あわよくば中国全土を征服して、中国に天皇制を押し付け、大日本帝国の一部にしようとしていたのである。~「大東亜共栄圏を作り“ハッコウイチウ(八紘一宇)”の世界とする」というスローガンは、そういう意味だったのである。~おそらく、いまの若い世代の日本人は、この時代の大日本帝国指導者たちの誇大妄想的グランドデザインを何も知らない。』
そうでしょうか。私は習いましたし、みんな学校で習っていると思います。
立花氏の文章は話題があちこちに飛んで読むのが大変です。結論は、「中国は大国である。経済が大発展している。科学技術も最先端である。だから日本は米国同様に中国を尊重すべきである。」「中国の原点は60年前の勝利である。日本はそれを認識し、中国を尊重すべきである。」といったところでしょうか。
非常にわかりにくいですが、これと似たことを、長谷川慶太郎氏が「中国「反日」の末路」で指摘しています。
中国人の頭の中では、戦後60年を経た今でも戦勝国なのであり、それにふさわしい地位と扱いを要求して当然と考えているようです。現在の日本の中国に対する態度は、敗戦国が戦勝国に対してとるものでは全くないために、それが気に入らないのだと思います。
もしそうだとすると、こんな要求にはとても付き合ってはいられません。立花氏の言う通り、「日本人の歴史認識の欠如」はいつまでもつづくのでしょう。
| 固定リンク


コメント
いつも貴ブログを興味深く拝見させて頂いています。盧溝橋事件の引き金になった銃弾をどちら側の軍が発射したか、歴史的な論争となっています。偶然、盧溝橋事件の現場に一兵士として参加された方から、私のブログにご連絡を頂きました。実際に最初の銃弾の音をご自分の耳で聞かれた数少ない方です。お時間がございます時にでも、元兵士の方の手記をご覧になって頂ければ幸いです。
投稿: 屋根の上のミケ | 2005.11.11 22:19
少し訂正。
×中国共産党
○中華人民共和国
失礼しました。
投稿: 黒輝 | 2005.09.19 01:53
>中国にとっては60年前の勝利がすべてであるようです。
その前の数千年の歴史は何だったのでしょうか。
まぁ、中国共産党の歴史は日本軍敗北後の
歴史より短いので間違っていないのではないですか?
同じ土地にある国だからその土地に以前あった国の歴史を
受け継ぐわけではないと思いますよ。
投稿: 黒輝 | 2005.09.15 23:43
あらまあ…。
立花氏は、他の分野では冷静な分析もできるのですが…。
個人の思い入れで状勢を語っちゃ不味いですよね…。
選挙予想も大ハズレだし、自分に赤恥をかかせた親米変人総理が許せんのでしょうか…。
要するに御自分の理想どうりに日本が行って欲しいという事じゃないでしょうか…針小棒大。
投稿: | 2005.09.13 00:34
「歴史を鏡とせよ」などと大上段に構える人間ほど独善的なのはなぜでしょうか。
戦後 ソ連の5ヵ年計画での経済的発展や宇宙開発の成功とその成功をもたらした先端科学技術に対して 礼賛しつづけた愚かな人々が存在しました。彼らはソ連の末路を無かったことにしようとでも考えているのだろうか。
「夢よもう一度」 見せ掛けの中国発展に、再び彼らは舞い上がっているのです。夢見るオヤジ少女ですね。
立花ご乱心といったところでしょう。
投稿: 案山子 | 2005.09.07 17:30
こんにちは。「立花隆」で検索して来ました。
私もこの立花隆の記事を見てかなりダメだなと思いました。w
私のブログでも簡単に突っ込みを入れてますのでよかったら見てください。
投稿: 比布智 | 2005.09.07 04:39